「あ、ひかり!!と…まごの手」
向こうから聞き覚えのある声が聞こえた。
「うっわ…彬だ」
真央のことを“まごの手”と呼ぶのは彬しかいない。
「何でここにいるの?もうすぐ試合だろ、4組の。悠馬のこと応援しないのかよ」
「え、マジで!?ひかり行こう!!!」
真央は急いで立ち上がって私の腕を掴んだ。
「いや…ひかりは遅れて行くから」
彬も私の腕を掴んだ。
「は?何でよ。良いトコ見逃しちゃうじゃん!!」
「俺がひかりに用事あんだよ」
「ははーん。彬、ひかりに告白しても無駄だからね。一応教えておくから」
そう言って、真央は勝ち誇った顔をした。
「誰がひかりに告るって言ってんだよ。いいからさっさと行けよ、まごの手」
「…じゃあひかり。あたし、さっきと同じ場所いるからね」
「分かった。また後でね」
真央はくるりと方向転換して体育館に向かって行った。
「ねぇ、話って何?」
彬は私の言葉に何も言わず、さっきまで真央が座っていた場所に座った。


