どんどん進んでいく男の後を着いて歩く。 男はあたしが着いてくるものと確信しているのか、一度も振り返らず姿勢を伸ばしたまま真っ直ぐに先を進んでいって。 それが癪だと思うのに、あたしの脚は勝手に男の背を追っていた。 『万葉』男が名乗った名前をあたしはもう一度ひっそり繰り返した。