ほどなく、うつむいたまま男が出てきた。 なんとなくタカシに似ていると思った。 奈央はそっと車に乗り込み、静かにスタートさせた。 ――〔てがる〕のおじさんは、タカシの名字を聞き間違えたんだ。飯田ではなくて井田だったんだ。・・・・しかし、あのおばさんじゃ閻魔大王だって裸足で逃げ出したくなるわ―― 奈央は、今聞いた内容を忘れることに決めていた。