彼女は店の常連客で、しのぶといった。




「あらっしのぶちゃん、昨日のカ・レ?」




結構人を見る目のあるベティママは、初対面でも気に入らない客には嫌味を言って帰るように仕向ける。特に数少ない女性の常連客がみみっちい男を同伴してきたりすると、それがその女性にとって初めてのボーイフレンドだとしても〔新しいカレ?〕等と、水を差すようなことを平気で言っていた。




しのぶはもちろん過去に何人か男性を連れてきたが、どれも似たりよったりドングリの背比べで、その中でも今回は特に酷かった。




口論のあげく、男はしのぶに水割りをブッかけて平手うちをかまし、勘定もせずにぷいとつい今しがた出て行ってしまった。




おまけに、彼女が先日キープしたばかりのボトルを一人でほとんど空け、更に追加した一本もカラに近かった。男はつまみも取るだけとって、そのたるんだ腹に収めていった。