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クリスマスソングがところ構わず鳴り響く商店街。
携帯を握りしめたまま、あたしは走った。
わかってる。渡辺はあたしを一番に見てなんかない。
渡辺の視線の先にいる人は、ずっと変わらないこともわかりきってる。
いい加減諦めなきゃって、この恋に未来はないんだって、何度も何度も言い聞かせた。
でもそんな気持ちも、たった一通のメールで簡単に崩される。
会いたいと、衝動が押し寄せる。
わかってる。
渡辺の好きな人はあたしじゃない。
でもあたしが渡辺を好きだから。
どうしようもなく、好きだから。
渡辺があたしを必要としてくれるのなら、どこまでだって行く。
クリスマスだろうが何だろうが、どこまでだって行く。
そうしなきゃ、この想いが死んじゃうから。
あたししかこの想いを、生かせてあげられないから。
だから。



