Noёl




……………

クリスマスソングがところ構わず鳴り響く商店街。
携帯を握りしめたまま、あたしは走った。

わかってる。渡辺はあたしを一番に見てなんかない。
渡辺の視線の先にいる人は、ずっと変わらないこともわかりきってる。

いい加減諦めなきゃって、この恋に未来はないんだって、何度も何度も言い聞かせた。

でもそんな気持ちも、たった一通のメールで簡単に崩される。

会いたいと、衝動が押し寄せる。


わかってる。
渡辺の好きな人はあたしじゃない。

でもあたしが渡辺を好きだから。
どうしようもなく、好きだから。

渡辺があたしを必要としてくれるのなら、どこまでだって行く。
クリスマスだろうが何だろうが、どこまでだって行く。

そうしなきゃ、この想いが死んじゃうから。

あたししかこの想いを、生かせてあげられないから。

だから。