「多分一生…好きだから」
友梨の想いは、どれだけのものなんだろう。
決して叶うことのない想いを抱えて生きる、その決意はどれほどのものなんだろう。
俺にはわからなかった。
その時点でもう、俺は指輪の相手に敵わないことを知っていた。
敵わない。
「…行けよ」
車のキーを開けた。
ガチャリと音が小さく響く。
「…智久、」
「向こうも…多分今頃、友梨を待ってる。…会いに行ってやれよ」
友梨が小さく俯いたのが、視線の端に見えた。
コクリと小さく頷く。その拍子に揺れる髪ですら、俺は愛しくてたまらない。
でも。
「…ありがとう、智久」
友梨の声と同時に、外の冷たい空気が車内に流れ込んだ。
多分もう、友梨が俺と会うことはない。
友梨と俺の人生が、交わることは決してない。



