Noёl


「…俺、よくわかんねぇけど」

わかんねぇけど、でも。

「友梨さん、別に藤木のこと恨んでなんかないと思う。恨んでたら…こんな綺麗な花束、持ってきたりしねぇよ。わかんねぇけど…そんな思いを抱いてる人が持ってくる様な、そんな花束じゃない気がする」

2つ並んだバラの花束。

恨みだとか辛さだとか、確かに全くないなんて言えないかもしれないけど、でも、きっとそれだけじゃない。

藤木も友梨さんも、ここに眠る人を大切に想う気持ちは同じだから。


「…ありがとう」


彼女の呟きは優しかった。
やっぱり好きだと思った。

今日ここに俺がいる意味が、あるのかどうかはわからない。

藤木にとって俺が、どういう存在なのかなんてちっともわからない。

わからないことだらけだ。
でも確実に、今言えること。

今日だからこそ、言えること。


「藤木、」