…成る程、店長が言うだけあって、店はかなり暇だった。
内装は可愛くていいと思うんだけど、なにしろ町外れにあるこの立地条件がよろしくない。
常連さん以外の新規のお客さんというのが滅多にないのだ。
枯れた葉っぱを取りながら、少し早いけどもう閉めてしまおうか、なんて考えていた3時半頃。
「すみません」
時計を見上げたあたしの背中に、女の人の声が届いた。
「はい」、急いで振り向くと、そこにはあたしと同じくらいの年の女性。
ファー付きのコートと綺麗な髪が印象的だった。
「あの…バラの花束、こしらえてもらえますか?」
「はい。どれくらいの大きさにしましょうか?ご予算は?」
「えっと…三千円くらいで…できるだけ、大きめの」
「はい、承りました」
営業スマイルを残して、花束作りに取りかかる。
バラは丁度花束ひとつ分程残っていた。少しサービスとして、そのバラを全て包む。
彼女は初めて見たお客さんだった。
あたしが花束を作っている間、店内をゆっくりと見渡していた。
その仕草ひとつひとつが、妙に丁寧で上品に思えた。



