Noёl



……………

「あ、福田ちゃーん、遅いよー」

相変わらず能天気な親爺だ。
その笑顔が今は無性に腹立たしい。

「店長がいきなり呼んだんじゃないですか。あたし今日休みなのに…」
「どーせ暇だったでしょ。僕、昼からちょっと出掛けなきゃいけないからさぁ」

「言っとくけど仕事だからね?」、そう言いながら店長は、いそいそとエプロンを取り始めた。

「今日はそんな忙しくないと思うよ。さっきも高校生のカップルが一組来ただけだし、もしあれだったら夕方には店じまいしていいから」

仮にもイブなのに、忙しくない花屋というのもどうなのだろうか。
そう思ったが口には出さず、エプロンをつけながら店長を見送った。

店長が言うなら丁度いい。
適当に夕方には店を閉めてしまおう。

やる気のない店員のあたしは、ひとつ伸びをしてレジに入った。

まぁいいや。
働いてた方が、気が紛れるし。

少し迷った挙げ句、携帯の電源を切ってからそれをエプロンのポッケに突っ込んだ。