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「あ、福田ちゃーん、遅いよー」
相変わらず能天気な親爺だ。
その笑顔が今は無性に腹立たしい。
「店長がいきなり呼んだんじゃないですか。あたし今日休みなのに…」
「どーせ暇だったでしょ。僕、昼からちょっと出掛けなきゃいけないからさぁ」
「言っとくけど仕事だからね?」、そう言いながら店長は、いそいそとエプロンを取り始めた。
「今日はそんな忙しくないと思うよ。さっきも高校生のカップルが一組来ただけだし、もしあれだったら夕方には店じまいしていいから」
仮にもイブなのに、忙しくない花屋というのもどうなのだろうか。
そう思ったが口には出さず、エプロンをつけながら店長を見送った。
店長が言うなら丁度いい。
適当に夕方には店を閉めてしまおう。
やる気のない店員のあたしは、ひとつ伸びをしてレジに入った。
まぁいいや。
働いてた方が、気が紛れるし。
少し迷った挙げ句、携帯の電源を切ってからそれをエプロンのポッケに突っ込んだ。



