「ホテルで……食事して……」
「ホテル!?」
「あ、あのね!別にご飯食べただけで、なにもないんだからね?」
茜がさらに身を乗り出すから、慌てて言葉をつけたした。
そうだよ、別になにかあるわけじゃない。
ただ美味しいご飯食べて、キャンドルで、誕生日プレゼントってネックレス貰って……首筋に……。
うわ……余計なことまで思い出しちゃった……。
勝手に頬が火照る。
「……、……志穂、志穂?」
「え?」
「もぉ、ボーっとしすぎ。 でもなにか困った事があったらなんでも相談してね?」
「うん。ありがとう」
親友の心遣いに、胸があったかくなった。
ふたりで笑い合って、あたしはパックジュースに手を伸ばす。
甘いピーチティの香りが鼻に抜けた、その時。
スマホがメールの着信を伝えた。
何気なく覗き込むと、それはハルからで……。
「ブハっ!」
「え、ちょ……今度はなに?」
テーブルの上のお弁当を持ち上げて、茜が目を見開いた。
「ご、ごめん。なんでもない……」
慌てて口元をハンカチで押さえながら、苦笑いを零す。
それから、恐る恐るスマホを覗き込む。
【図書館に今すぐ来い】
なんなわけ?
茫然としていると、続けざまにメールが届く。
どれも相手は、ハル。
【俺を待たせるな】
「……」
なにそれ、なにそれ!
なんでそんな命令形なのっ?!
なんでそんな自己中なの?世の中の貴族の方々そうなのっ!!?
【全力で走って来い】
む、ムカつくんですけどーー!



