「人間とは不思議な生き物です。大半の人間と生き方、考え方、やり方…何かが違うと浮いてしまいます。」
突然、真剣な顔で話しだす彌生様。
「突然…何を……?」
「貴女のお兄さんはそういう人間でしたよ。他の人とどこか違う、特殊な類でした。行動も、考えも、……そして欲もね。」
ド ク ン 。
「幼い女の子に欲情をぶつけ、何が楽しいのか理解できなかった。……貴女のお兄さんはそういう類の人間でしたよ?」
思い出したくない。考えたくない記憶が、引き出される。
まだ幼い、学校にすら通っていなかった…あれはたぶん私が四歳の頃。
「しかも実の妹に手を出すなんて。人間の葛としか思えません。今でも私はそのときのことを忘れられませんよ、お人形さん。」
部屋で寝ていた私に突如襲いかかる黒い影。
やめて、と叫ぶと、殺すぞ、と首を締められた。
「楽しそうに話していましたよ。最高の快楽だ、こんなに愉快なことはない、とね。聞いている此方が実に不愉快だった。」
月明かりで照らされ、映し出された姿は
顔を楽しげに歪ませ、私で欲求を果たそうとする実の兄、雅樹お兄ちゃんだった。

