「お兄ちゃんを…殺した?私が…雅樹お兄ちゃんを、殺した?」
思わず口から零れた言葉。
「おや、思い出したのですか?お兄さんのこと。何をされ、何を思い、どのようにして殺したか…全て、思い出したのですか?」
楽しそうに話す彌生様は恐ろしいほどの笑顔で。
何を考えているのか分かりたくもなかった。
「わ、私は何もっ…!!何も覚えてない。」
「否定はしないのですね。お兄さんを殺したこと。まあ、貴女が殺したくなるのも無理はありません。人間の葛でしたから。貴女のお兄さんは。」
冷たい瞳でそう言い放つ彌生様はどこか怒りが含まれているようであった。
「貴女は私だけのお人形さんですからね。葛の奴隷などではありませんから。」
冷静な態度、なのに自分に言い聞かせるように言葉を発する彌生様はどこか様子がおかしかった。
それに
「どうして、私やお兄ちゃんのことを知っているの?」
オークションで初めて出逢ったはずの彌生様が私のことだけでなく、お兄ちゃんのことも知っているなんて、おかしい。
私は、大切な何かを忘れてしまっている。

