二 億 円




「お兄ちゃんは?お兄ちゃんはどこにいったの?───君はお兄ちゃんじゃないの?ねえ、ねえお父さ「静かにしろ!!雅樹はお前のせいでっ…!!」」




雅樹( マ サ キ )…─それがお兄ちゃんの名前なの?



名前を言われてもピンとこなかった。



「尚哉さん、落ち着いて下さい。それは『禁句(タブー)』ですよ。」


可笑しそうにほくそ笑みながら、お父さんの肩を叩く。



「っ……!!君だって、君だって雅樹を殺したのと変わらな「尚哉さーん。あまり余計な口叩くと契約は取り消し、ですよ?」」


殺した?契約?幼い私には分からない言葉ばかりだった。



「今日はこの辺で失礼しますよ。また来年、お伺いします。子猫ちゃんにも会えましたし、ね。」


軽く会釈をし、玄関から出て行く男の人は










笑っていました。





「雅樹っ…雅樹………!!!うっ…ううっ!…───。どうして、どうしてあんなことをしたんだ?どうしてお前だけ、何にも覚えていないんだ?何故、どうして…




お前は此処にいれるんだ!?」



涙でぐしゃぐしゃになった顔で私を睨みつけ、暴言を吐き散らし家を飛び出した。







雅樹を殺したのはお前なのに。と暴言を吐いて。