【穂乃歌】





「はい、よろしくお願いします。」



パチン。

支葵が携帯を閉じる音が愉快な音を立てて響いた。


たった今、お屋敷へ向かうための車の用意を支葵がしてくれた。





未だに、出向く理由がさっぱりわからない私だけれど、
ひとつだけとても楽しみなことがある。














お屋敷に行けば、

俊と海琉に会える。




毎日一緒だったあの二人。
なんだかとても長い間会っていないように思えてしまう。



だから、会えると思うとすごく嬉しくて。




胸の内を躍らせている私の隣で、



「ふあぁ…」


支葵が盛大な欠伸を一つ。



『まだ眠いの?
猫みたい。』




なんてさり気なく囁くと…。




「は?狼の間違いだろ。」



支葵は怪しい笑みを浮かばせ…



『…!』




唇を重ねてきた。










「油断してるなよ、バーカ」

『う、うっさいバカ!』










猫くらいおとなしければいいのにっ…!
この狼彼氏があぁっ!!