私の世界での隆也君の家では、夜9時過ぎでもみんな起きてるんだけど……こっちでは、どうなのかなぁ?

家の前まで来てそう思うと、呼び鈴を押し掛けていた手が止まった。



どうしよう。



「彗」



えっ?

2階の方から隆也君の声がして、そっちを見た。



「玄関、開いてるから、どうぞ」

「あっ、うん」

私は返事をしてから、そっとノブを回す。



「おじゃましまーす」



小声でそう言うと、勝手知ったる他人の家……で、階段を昇り、そこでやっと自分が置かれていた立場を思い出した。



でも……。