更衣室でクロちゃんに「ありがとね」と言われたので、「クロちゃん頑張りなよ!」と言っておいた。


クロちゃんは1本分使い切るくらいの勢いで、制汗スプレーを自分に振りかけていた。


頭の地肌までにかけているときは、さすがにやりすぎだろっと思ったけど、恋する乙女は盲目らしかった。


更衣室中フローラルの匂いと、スプレーから出る煙でむせかえるようになる。


更衣室には当番だった私達しかいないのも、クロちゃんのスプレーの量を増やした原因かもしれない。


クロちゃんは仕上げにグロスを塗って、


「じゃあ、田野っちを落として来んね!」

と言って、意気揚々と更衣室を出て言った。


フローラルの匂いを充満させたままで・・・


≪この制汗スプレー1本使いって男の子を落とすのにに有効なのか?≫と思いつつ、私も更衣室を後にした。


鍵を閉めて、歩きだそうとしたら、まだ前を田野っちとクロちゃんが歩いていた。


げっ。歩くのおそっ!陸上部のくせに、牛歩かよ!ってくらい遅い。