「名前を呼んだら大丈夫。あの時も、ちゃんと戻ったよ…。傍にいてください!」






泣きながらどうしてもイエスと言わない彼を見た。
放れたくないのに。ダメなの?






「私の血は食べれば、しばらくすれば元に戻る。献血と同じでしょ?!」





揺れる瞳が見えた。






「私の血をあげる。緑の君が生きられるくらいだったら大丈夫でしょ?」





緑の君はさゆりを見つめた。
さゆりは目の奥にうっすら緑の君を映す。






彼の瞳、漆黒の奥に綺麗な緑色が眠っている。






「必ず…。呼んでくれるか?緑の君と…。」






「はい!」






「そしたら、自分を見失ない。絶対に…。さゆりの声なら…。」






「ずっと一緒にいてください…。」






緑の君が小さくうなずく。
さゆりは嬉しくて走り出したくなりそうだった。





自分の力にまだ気づくはずもなく。
また祖母というやっかいな人のことも忘れていた…。





緑の森には風が吹き抜け。
二つの影が一つになり。
見つめあいながら約束の口づけを交わした。






白い月が空にうっすら見えていた。










END



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