ふらつきながらベンチに座ろうとしたがめまいがする。





バランスを崩して倒れる。
目の前は真っ暗だった。





確実に痛みが来るはずなのに何もわからなかった。





視界がはっきりすると、体にはキラキラと光るものがついていた。





それをたどると林の中に…。木の上につながっていた。





目をしっかり開けると、緑に輝く髪が見えた。





キラキラしたものは切れていた。





思わず抱きついた…。






「緑の君!」






頭を撫でる彼は…。体を離した。





「さゆり…。さよならしよう。」






「えっ…。なんて?」






「小さな蜘蛛覚えてる?」





「うぅん…。」
さゆりは覚えていなかった。





「花の中に降ろしてくれた…。踏まれそうだったの手でふさいだろ?」






さゆりは教室で小さな緑の蜘蛛を見つけたのを思い出した。踏まれそうだったので、咄嗟に手を出したのだった。
たしか花蜘蛛だった。






「それが…。俺だよ。」




「で…でも。何で私のところに…。」






微笑みながら
「さゆりの願い…。一つだけ叶えてあげる。」






一つだけ…。






さゆりは黙ってしまった。





「一年前は人形に成れなかった。やっと妖力を得てここに来た。掟で借りは作らない。君のところに来たのはその為。でも傍にいると、あの人塩かけようとするから参ったよ。」





「おばあちゃん?でも私にしか…。もしかして!急にいなくなったのって…。」






「しっ!」






口に手を当てられる。
人が…誰か来そうだった。人の声はだんだん通り過ぎていく。






綺麗な瞳が見えた。
「さゆり、願いを言って…。」






願い…。願いは一つだけ…。何を言おうかなんて考えることもない。






「一緒にいてください。ずっと…。守ってください。」






「さゆり、何故さゆりが…。」






さゆりはそれ以上言わないように口に手を当てた。





「私の血を食べたのは毒が入っていたから。仕方なくでしょ?そうしないと私は死んでた。違う?」





「でも…。いつかあの時のように自分を見失う…。そしたら…。」