「み…君…みど…緑の君。」
彼の動きが止まる。ぴくりと耳が動いた。
目がかすむ、体の力が抜ける。必死に緑の瞳を見つめる。






月が雲に隠れ、雲間から光が漏れていた。






「緑の君…。わ…たし。」





数珠が光出す。光は緑の瞳を照らし、爪や髪の毛が元通りになっていた。牙は口に収まっていく。瞳は輝きを失い、漆黒になる。





「さ…ゆり。」
彼は恐怖の顔をしている。





「大丈夫、ね?大丈夫だから…。」
安心したら体の力がもう…。立っていられない。





「さゆり…ごめん。俺は、俺はさゆりを…。」






まだ…。言わなきゃいけない…。
「私。少し怖いって思った。でも…。あの時…。あの時ね…。あなたになら食べられてもいいて思ったの…。私本当の気持ちわかった。私、緑の君が好き…。わ…たし…。もう…私を食…べて。」





さゆりの目が閉じられた。体に力はない。抱き寄せた。






「ここに来たのは…こんな…。痛くないから…さゆり…。」






さゆりの首もと、そして唇に口をつけた。
緑の風が月の下、森の中を吹き抜けた。