「何で柚子が謝るの?」
「あの人、あたしを心配してくれてるだけなの。だから」
「アイツ、恋人?」
「え?」
「ヤケに俺の事警戒してたからさ」
「そんな恋人とかじゃない」
あたし達は結婚するんだ。
でもそれをはっきり言えない自分もいる。
「そうなんだ」
自信を持って言えないよ。
「とりあえず、今日は帰るね」
ありがとう、お辞儀をしてから北原さんの元へと戻った。
「あのね、北原さん」
「うるさい、黙って」
車の中でずっと声をかけても名前を呼んでも、北原さんはずっと怒っていて。
目も合わせてくれない。
一緒にいるのに..これじゃああたし達夫婦なんてなれないよ。
「翔さん..」
小さく呟くように名前を呼んでみる。
でも
「そんな言い方したって許さない」
厳しい言葉。
低い声。
それが余計あたしを寂しくさせる。
マンションの部屋に着くとすぐにリビングに押し込まれて
ソファに無理矢理落とされる。
「何考えてんの?」
低い声。
それが余計あたしを寂しくさせる。


