電気を付けないままの静かで暗いリビング。 そこに一本の電話が鳴り響いた。 正直に言うと出たくはない。 でも緊急の用事かもしれないし。 仕方ない、でるか。 重い腰を上げて電話をとった。 「もしもし」 「もしもし?柚子?」 聞き慣れた声があたしの涙腺をどんどんゆるめていく。 「お母さん...」 この前も電話したばかりなのに 暖かい声がじーんと伝わってくる。 「柚子?元気?」 ついこの前かけてきたくせに 「元気、だよ」 でも嬉しい。 「ちょっと待ってね、ほらお父さん」 「もしもし、柚子?」