空へ。‐夢の先‐

‐紗姫side‐




あれからしばらくして、順調に会見の日が近づいている。


なのに、まだ龍くんは成二のところへ通ってるらしい。


町田さんも心配してるのに…。


どうか、無事でいてほしい。

そして、成二を救ってほしい…。






あたしの想いを知ってか知らずか、
ある日の放課後。


息なり鳴り響いた携帯には、“龍くん”という文字が光っていた。



紗姫「もしもし、龍くん?」

龍《紗姫?今、大丈夫か?》

紗姫「え…大丈夫だけど…、」

龍《女優になる第一歩だ。頼まれてくれるか?》

紗姫「……………?」







‐龍side‐


紗姫に電話したあと、事務員さんに許可を得て、俺は高木高校の演劇部の部室に来ていた。



あの頃より汚なくなった床や壁。

所々にタバコを押しつけたような跡があった。



…変わったな。


俺がこの高校にいた1年半。


あの時は確かに毎日がキラキラ輝いていた。




変わり果てたこの部室。

あの頃の俺たちの夢は確かにこの部室の中に生きてるのに…今の奴らはまだ見ることができていない。



本当に困った後輩だ。




そっと壁に触れると

今にもあの頃のメンバーの笑い声が聞こえてくる気がした。




────ガチャッ



開いたドア。


そこには求めていた人物がいた。





龍「よ、」

成二「………………」

龍「待ってたぞ」


俺を見て、固まったままの成二。



龍「なあ、成…「しつけえんだよ!!!!!」



俺の声を遮って叫んだ成二は、カバンを床に叩きつけて俺の真ん前に来た。



成二「何なんだよオメェよ…、」

龍「………………」

成二「俺に何か恨みでもあんのかよ…?」

龍「………………」



真っ直ぐな成二の目は
痛いほど俺の心に突き刺さる。