空へ。‐夢の先‐

龍「…そんなこと言うなよ、」



龍くんはうつむいたあたしの頭に手を置いた。

そのままゆっくり顔をあげると、

龍くんは笑ってた。





龍「…俺はお前やみんなに

毎日がキラキラするような…そんな…
綺麗な夢をもってほしいんだから、」





一瞬で、涙が溢れそうになった。


あたしは何を疑っていたんだろう。


あたしは何に怖がっていたんだろう?


笑われること?

叶わなかったときのこと?



目の前に、こんなに

勇気をくれる人がいるのに。



誰に笑われても

笑わないたった1人を

あたしは知ってるはずなのに。



きっと、必ず


夢の先まで連れて行ってくれる人が


目の前にいるのに────。





紗姫「ありがと龍くん…、」

龍「よしよし、そんな泣きそうな顔しない」

紗姫「ありがと…ありがとう…、」




何度も何度もありがとうと言った。

その度にずっと頭を撫でてくれた。




***



龍「そうか、村田がそう言ってたのか…」

紗姫「村田っていうんだあのチャラ男…」



2人で座って、なんとなく空を眺めながら話してた。

しばらくの沈黙のあと、龍くんが口を開く。






龍「俺は自分が売れることで…
成二の道標っていうか…目標になれると思ってた」


紗姫「………………」


龍「…でもそれは"勝手な気持ち"で…

あいつにとっちゃ
苦痛でしかなかったんだな…」


紗姫「………………」


龍「…でも今見れる夢は今しかない。

あいつの諦めた夢は
…あいつの夢をうばった俺が取り戻す」


紗姫「………本当にもうお芝居嫌いかもしれないよ?」


龍「大丈夫だ。
成二はきっと、まだ好きだから」



笑いかける龍くんは

何故か説得力があって、あたしも思わず頷いた。


成二のこと…

きっと分かってる人はこの人しかいない。

そう思った。


成二「……………、」