空へ。‐夢の先‐

あたしや龍くんが言ってることは綺麗事なのかな?



いまさら夢なんて持ったって
何も変わらないの?


あたしもあいつらも、大きくまとめれば同類。



あたしたちみたいな
勉強なんかろくにしないで、勝手な理由つけてグレて

人を傷つけてきたどうしようもない人間は…



大きな夢を見ちゃいけないの?

バカにされるだけ?


変わることは
これから先──本当にできないの?




紗姫「……はあ、」



目を閉じて、2回目のため息をついた時。





「もう暗いぞ、家帰れよ不良娘」





龍くんの声がした。


ばっと顔をあげれば
優しく笑った龍くんがいた。



紗姫「龍くん…」

龍「風邪引くぞ」

紗姫「…今日も…、成二たちに会って来たんですか?」

龍「うん。」

紗姫「…なんでそんなに頑張れんの…?」


龍「……え?」


紗姫「…突き放されて…辛くないの?」



あたしは…たった1人の人に言われた
たった1言に

こんなにも惑わされてしまうのに。

自分の夢を、信じられなくなってしまうのに。





龍「…辛いわけないだろ、」

紗姫「………?、」

龍「アイツらの本音じゃないか

本気でぶつかってきてくれてる証拠だろ?」



笑う龍くんに
心が痛くなった。



紗姫「…綺麗事じゃないよね?」

龍「え?」

紗姫「…あたしが見てる夢…

…綺麗事じゃないよね?」



思えばこの時、あたしは龍くんを酷く傷つけてしまっただろう。


だけど、あたしは何も察することができず

目の前の人に、そのままの疑問を投げかけてしまった。



心の中できっと、否定してくれると思いながら。