空へ。‐夢の先‐

美樹「それから、成二は小5で劇団を辞めて。


野球一筋で頑張ってたのに…」


紗姫「…なんかあったの…?」


美樹「…中1の夏、試合相手の学校の不良に

腕を怪我させられて

本当に必死に努力して1年でレギュラー勝ち取ったのに…試合に出られなかった…」


紗姫「…ひどい…、」


美樹「全治3ヶ月で…そうなったらもう全部どうでもいいっていうか

3ヶ月のブランクは取り戻せないって思ったのかな。


努力しても認めてもらえない、意味ないって…


それから荒れまくって今では不良グループのリーダー的存在なの」



紗姫「そうだったんだ…」



成二は今、苦しんでるんだ。


だってあの、冷たい人の目。


あの目に突き刺されてできた心の傷はそう簡単に治らない。



踏み出せないたった一歩の重みが

認めてもらえない悲しさが

毎日が地獄のようなつまらなさが



あたしには、痛いほどによく分かった。



“紗姫は成二の気持ち、俺より分かると思うからかな”



龍くん、あたしやっと

あの言葉の本当の意味を理解できた気がするよ…。




紗姫「……成二、苦しんでたんだね、」

美樹「……………、」



ただの生意気な不良だと思ってた。




“おい大丈夫か”

“お前人に言ったこと忘れてんじゃねぇぞ”



そういえば、いつだってあいつは

人を傷つけるようなことはしてなかったんだ。




“二度とそのツラ見せんじゃねぇ!!!”



あれは、唯一本人が見せた心の叫びだった。




…ダメだ、ダメだよ。




“龍にないものを持ってる”




昔のあたしも今の成二も、色んなことを
無駄だと言って諦めてきたけど




“才能ある”




もう、何もしないで

諦めちゃダメだ。


進むためには…“たった一歩”を踏み出さないといけないんだ。


今、今しかない。この時に。