「かわいくない」 「え?」 「かわいくないよ」 「きゃっ」 わたしの髪をクシャクシャッと撫でた健史は、そのまま席へと戻ろうとした。 「……健史!」 その背中に叫んだ事を、叫んだ後に気づいた。 どうして呼び止めたりなんかしたんだろう……。 わたし、遠くなっていく健史の背中を黙って見ていられなかった。 振り返った健史が、ゆっくりと歩み寄って来る。