中川さんに文庫本を貸した日の夜。 家に帰ったところで、一本の電話が。 「……………げ。」 携帯電話のサブディスプレイに表示された名前を見て、出たくないと思ってしまう。 「………もしもし…?」 『…っひ、弥、斗……』 ……は? 泣いてる? 「…どうしたんだ? ………晶奈。」 かけてきたのは、幼なじみで同い年の 下屋敷 晶奈 シモヤシキ アキナ 同じ高校に通っていて……モテモテ? らしい。 いつも、もっと元気いい声でかけてくるのに。 どうした? と聞く前に、涙まじりの声がした。 .