「…さっき目が合ったのに、なんで反らしたの?」 「………ぇっ…」 後ろから近づき、耳元で囁く。 肩を跳ねさせた彼女に、渦巻いていた真っ黒な感情が薄れていく。 黒からグレーになったみたいだ。 しかし、さっきから浴びせられる痛いくらいの視線。 ……知らない、男が俺を睨んでいる。 「声くらいかけてくれればいいのに。寂しいじゃん?」 「ぁっ、あの…!!」 俺を振り向いて見つめられる。 戸惑う彼女の肩に手をやり、少しだけ引き寄せた。 目の前のヤツに見せつけるように、俺も睨み返す。 .