車から車いすに移動しているとき、体育館の方から拓海くんの声がした。
その声に反応した親太郎は、軽く右手を上げた。
高橋くんと叶くんも体育館から出てきて、親太郎とハイタッチをした。
すぐに舞台袖に移動したあたし達。
今日の曲順を親太郎に伝え、開始時刻まで小さな声でリハーサルをした。
「あれ? この最後の曲って、なにやんの?」
親太郎が手にしているプログラムには、最後の曲名を記入していなかった。
あたし達からのサプライズプレゼントだから。
「あー、そこは大丈夫だよ。おまえは聞いてるだけでいいから」
あまり深く聞かれないように、高橋くんが素早く言った。
親太郎は腑に落ちないといった表情。
「ふーん」
と、口を尖らせていた。
時間が過ぎるのは、本当にあっという間で、ライブ開始時刻まであと15分を切った。
いつもは会場から見ているだけのあたしも、今日はたった1曲だけだけど舞台に上がる。
だんだん、緊張で足が震えてきた。
舞台袖の小さな窓から、会場を覗いてみる。
会場の椅子は、まばらではあったけど、結構な人数で埋まっていた。
3年生の人数は、半分といったところだろう。
思ったより集まってくれたから、すごく嬉しかった。
後ろの席に、親太郎の両親と看護師さんの姿が見えた。
こっちもスタンバイOK。
おじさん、おばさん。
見ててね。
親太郎のカッコイイ姿、もう少しで見られるから。
腕時計で時間を確認する。
あと、10分。
「今日は、マジでサンキューな」


