12月20日。
ライブ当日。
会場の準備は高橋くん達に任せ、あたしは親太郎を迎えに行った。
病院に着いた時には、もうすでに準備万端だった。
「早いね」
あたしが微笑むと、
「当然」
車いすの上で、親太郎は口角を上げた。
外に出ても寒くないように、できるだけ厚着をしていた。
寒がるふりをしてマフラーに顔を埋めていたけど、あれはただ、ニヤける口元を見られたくなかったからだと思う。
でも、ここにいる誰もがそれに気付いた。
看護師さん2人に。
親太郎の両親。
そして、担当医の斎藤先生が見送りに来てくれた。
斎藤先生は、親太郎に拳を向けた。
親太郎はニッコリ笑うと、それに自分の拳をぶつけた。
「そろそろ、行こうか」
あたしは、親太郎の車いすを押した。


