ライブの曲は、もうほとんど仕上がっていた。
あとはこれに親太郎の歌が入れば、完璧だ。
でも、あたしのピアノの出来はイマイチだった。
片山さんも、あまりのあたしの不器用さにイライラしたこともあったと思う。
けれど、そんな表情は一度も見せなかった。
何度も同じところを教えてもらい、何とかひとりで弾けるようにはなった。
少しミスはあるものの、歌に支障はでないと思う。
ライブの準備は順調だけれど、親太郎の容体はどんどん悪化していた。
鼻血はもうずっと止まらず、治療のせいで手は腫れ、紫色の斑点が浮かんでいた。
その手を握りしめると、あたしの指のあとがついて、なかなかとれなかった。
親太郎の息は細く、微笑む力さえ残っていない。
間に合うだろうか。
神様、あともう少し親太郎に時間を下さい。
せめて、あと5日。
ライブの日まで、どうか親太郎を連れていかないで下さい。
胸元にさがるネックレスを握って、何度も祈った。


