颯太くんの声が、床に落ちた。
車いすの背もたれに体重を預け、颯太くんは、ひとりひとりと目を合わせていった。
「…父さん…母さん……」
颯太くんの両親は、颯太くんのそばにしゃがみ込んだ。
「颯太……」
颯太くんのお母さんが、颯太くんの頭を撫でた。
お父さんは、颯太くんの手を強く握りしめている。
それを、颯太くんは強く握り返した。
「僕…父さんと、母さんの子供でよかったと思ってる……こんな病気になって…大人まで生きることができなかったけど……僕…すごく幸せ…だった……」
颯太くんは、大きな呼吸を繰り返した。
その音はいつもよりも大きくて、限界を知らせていた。
「……親太郎」
「……ん?」
親太郎も、颯太くんのそばにしゃがみ込んだ。


