広い庭を紬と二人で歩く。
途中メイドや庭師に挨拶をしながらだから、二人っきりとまではいかないけど私は嬉しかった。
「全く。何度も言ったでしょうお嬢様」
「え?」
「静には構ったりなんかせずに無視をしろと」
確かに何度もそれは言われていた。
もう耳にタコが出来るんじゃないかと思うほど。
だけど・・・
「無視をするのはあんまりですわ。せっかく話かけているのに・・・」
「相手にするだけ無駄、わかりましたか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「わ・か・り・ま・し・た・か?」
「わ、わかりましたわι」
恐ろしい程笑顔で言った紬に慌てて了承すると溜息をつかれた。
「ま、どうせまた懲りずに話すんでしょうね」
「・・・交友関係は大切ですわ」
「迷惑がっていたら意味ないでしょう」
「そ、それもそうですけど・・・」
ダメですわ・・・紬に口では勝てませんわ。
紬と話している間に玄関が見えてきた。
「お嬢様、どうぞ」
私よりも先に前に行き玄関の光沢を失っていない取っ手に手をかけた。
そうして、両開きの扉を片方ずつ開けていく。
別に片方だけでもいいと昔に言ったのだがそれでは格好がつかないと言われた。
「ありがとう紬」
両方とも開け放たれて私は紬にお礼を言うと数段の階段を上り玄関をくぐる。


