「だから、うまいって。」
「そ、そんなお世辞なんていいです!もう返してくださいっ!!」
おとなしくなったのはほんの一瞬で、またすぐに騒ぎだす。
ったく。うまいって言ってんのに……
「嘘なんてつかねぇよ。確かに見た目はまぁ―あれだけど、味は悪くない」
「ほ、ほんとですか……?」
まだ疑うのかよ……
「マジだって。」
なんでこんな疑われてるんだよ……
「やっ……やった―っ!!」
うるさいくらいに叫んで、飛び跳ねる鈴加。
「そんなに喜ぶことか……?」
クッキーごときに。
「だって嬉しいんですもんっ♪」
満面の笑みを俺に向けてきた。
「っ……」
な……なんなんだよ……
「料理なら得意なんですけど、お菓子系とかは作るの苦手なんですよね」
「そっ、そっか……」
意味のわからない自分の感情に、焦りを感じた。
「で、でもちょっと甘過ぎじゃねぇか?」
焦りを隠すために、冷静にそう言った……つもり。
「あっ、それは孝太が……」
そこで言葉を飲み込んだ。
明るい笑顔がすぐに消え、苦笑いを浮かべる。


