「司く~ん」
この声は……
「はぁ―……」
「もうっ。あからさまにため息つかないでよぉ~」
ピタッと腕に絡み付いてきた。
「何かよう?」
その腕をほどき、道岡を睨んだ。
「っ……」
すると道岡が悲しそうな顔を向ける。
初めてみた道岡の表情。
いつもどんなにわずらわしく扱っても、嫌なくらいに引っ付いてくるのに。
「司くん……」
「……あ?」
「放課後、ちょっと時間あるかな?」
「……え?」
「教室に残っててほしいの……」
俺の答えを聞くまでもなく、道岡は去っていった。
いつもなら待ってるなんてしない……
でも、あの瞳……
まるで何かを悲しんでいるあの瞳が……、鈴加と重なって見えたから……
「じゃあな。司」
「あぁ―」
放課後になり、席に座ったまま外を見下ろす。
鈴加は帰っただろうか……?
それともあの部屋に来てくれているのだろうか……?


