「つ・か・さく~ん」


「……」


「何だよ……。そんな顔で見んなよ!」



いや、見たくもなるだろ。



夏樹って本当に、バカっぽいヤツって、思っちゃったんだから……



「そんな司にはこれ、あげないぞっ」



そう言ってぴらぴらと俺の前で靡かせる、チケットみたいなもの。



「別にいらねぇからいいよ」



「えぇ~。そんなこと言っちゃっていいのかな~?」



何か企んでいる様子。



「鈴加ちゃんがきっと喜ぶ、チケットだと思うんだけどな―っ」



……鈴加が喜ぶチケット?


「蘭にリサーチ済みだから、間違いないのにな―っ」


「……何のチケットだよ」


「おっ!やっぱり気になる?」



この笑みがイラつく。



「水族館のチケット♪」



バンッと机に置かれた、青いチケット。



「新聞の勧誘でもらってさ~。俺と蘭で行ってもよかったんだけど、蘭が司に譲ってあげて。って言うから―」


「水族館……?そんなもんが楽しいわけ?」



魚が泳ぎ回ってるだけじゃねぇかよ……



「お前にはロマンチックという言葉がないのかっ!まぁ、それはいいとして、鈴加ちゃん、水族館行ったことがないみたいだよ」


「……は?一度もか?」


「そう。たったの一度も」


俺だって最近は行ってねぇけど、さすがに小学生の遠足で行ったことがある。