「……抱かれたの?」
「……えっ」
「抱かれたのかって聞いてんだよっ!!」
――ビクッ
初めて聞いたような、先輩の怒った声。
シーンとした図書室に、先輩の声は吸い込まれていった。
「だ……抱かれたって……誰に?」
震える声はまるで自分の声ではないような気がした。
「……わかってんだろ?昨日、そいつに道端で抱きしめられて、そのまま家に一緒に入ったんだろ?」
抱きしめられて……?
家……に……?
……あっ。
「ちっ、違います!」
「どうやって抱かれた……?」
「違っ……!」
「あいつの腕の中で、甘えたのかよっ!!」
違うのに……
智也とはそんなことするわけないのに……
恐怖からか、何からかわからないけど、言葉が出ない。