「あ、あたし帰りますっ!!」
「えっ、おいっ!」
引き留める俺を無視して、さっさと出ていってしまった女
……鈴加、か。
こいつのことは前から噂でちょくちょく、聞いた事があった。
『2年にかわいい女がいる』
それが鈴加の噂。
でも俺はそんな噂、興味のカケラもなかったし、実際鈴加っていう女を見たこともなかった。
つ―かぶっちゃけ、どっちかと言うと嫌いな方だったんだ。
明るい性格で、両親は有名なブランドデザイナーという幸せな家庭。
それに比べて俺は、幸せな日々なんて……過ごした記憶が一切無かった。
だから、会ったこともないのに……俺は鈴加を嫌った。
どうせ幸せに笑って、悲しいことなんて無縁な存在だと思っていたから……