「な、何言ってんの!?無理なんて……無理っ……なん……て……っ」
そこからは言葉が出なかった。
言葉の代わりにぼろぼろと溢れ出てきた涙。
「あれっ……。おかしいなっ……」
両手で涙を必死にぬぐった。
「なんで……涙なんか……」
「っ…!!」
――グイッ
腕を引かれ、温かい体温に包まれた。
「へっ……えっ!?」
あたし……抱きしめられてる!?
な、なんで!?
意味のわからないまま、智也の腕の中で暴れた。
バックを地面に落として、必死に腕をほどこうとした。
なのに……
「お前さ……マジ、馬鹿……」
ギュッとさらに強く抱きしめられる体。
普段のあたしなら、馬鹿なんて言われたら、絶対怒ってるのに……
哀しそうな智也の声に、何も言えなかった……
なんで智也が哀しそうな声、するのよ……
「マジで馬鹿すぎ……」
それから智也は励ますわけでもなく、慰めるわけでもなく……
ただずっと、哀しそうに『馬鹿』と言って、強く……強く……あたしを抱きしめた。


