「あははっ~。もう司ったら~」


「ははっ」



さっきから廊下で楽しそうに話す男女。




男の人は司先輩だけど、女の人はあたしじゃない。



「今日の人は初めて見るな……」



ボソッとそれだけ呟いて、その場を去った。




司先輩と付き合って2ヶ月。


あまりにも変わってしまったあたしたちの関係……




イヤ、変わったのは司先輩かな……?



前まで人前で笑うことなんか見なかったのに、今では女の子にニコッと笑顔を向けている。



触られても、無理にほどこうとしないし、嫌がったりもしない。



それどころか、その女の人の肩に腕を回している。





噂では他の人と手を繋いでただの……



キスしてただの……




そんな噂が耳に入ってくるようになった。


でもそんな光景を見ていないあたしは、まだ我慢できる。



我慢しないといけない。



束縛はしちゃダメ……



ヤキモチは重いだけ……



あたしの頭の中で、完全に出来上がってしまった定理。



そして、あたしが守らなきゃいけない定理……



「鈴加―っ」


「あっ、蘭」




向こう側から走りよってくる蘭。



「もぉ―っ!突然走り出すからどうしたのかと思ったよ!」