「ってかもう怒ってないの?」
「……え?」
なんのこと?と言ったような顔を向ける。
これはもう、怒ってないな。
ホッとしてるような、残念なような……
「昼休み、怒って帰っちゃっただろ?」
「あ……あぁ―……、あれは別に怒ってなんかないですよ―」
そう言ってニコッと笑ってみせた。
怒ってなかった……?
あれが……?
でもこれ以上聞くのも変だし……
「な―んだ。てっきり、ヤキモチ妬いてたのかと思った」
鈴加を覗き込むようにして、わざとそう言った。
「違いますよ♪ヤキモチなんかじゃないです」
俺が期待してたのはそんな言葉じゃない。
――『ヤキモチを妬いてた』
そのたった一言の安心感がほしいのに……
つまんねぇ―の……
「……司先輩ってそんなに目が悪いんですか?」
――ドキッ
しっかりと俺の目を見つめる鈴加の瞳。
「あ、あぁ―……、まぁな」
そんな綺麗な瞳から逃げるように、適当に相づちを打って視線を反らした。
「ですよね―。眼鏡外してないとこ見たことないですもん」
そりゃ―そうだろうな。
わざと外そうとしないんだから……


