「あぁ―あ。帰っちゃった」


鈴加の帰っていく後ろ姿を見とれていた俺の肩に、ドシッともたれれかかってきた夏樹。



「よかったの?引き留めなくて?」


「どうせ見てたんだろ?引き留めたのに、振り払われたとこ」



そう言って夏樹を見ると「あっ、バレた?」とニヤッと笑った。



「マジわかんねぇ―。なにに、そんなにキレてんのか」



朝は普通だったよな……?


普通に笑ってたよな……?



もしかして、朝に教室でふざけたのが悪かったのか?



でも凄く智也と仲良さそうに話してるから……




鈴加は俺のモンだって、教えときたくて……



つ―かあんな簡単に頭撫でられてんなよ。



上目遣いなんかで、あいつのこと見ちゃってさ。



あんな風に見られたら、誰だって男は勘違いしちまうだろ……?



もう少し危機感持てつ―のっ!



「ふっ……」



「……なんだよ。」



口元に手を置き、バカにしたように笑った夏樹を睨む。



「お前さ、マジで鈴加ちゃんが怒ってる理由わかんなかったわけ?」


「……っ」


「これだから恋愛初心者は」


「うっせ!それは関係ないだろ!!」