「どうせまた司先輩のことだろ?」
――ドキッ
「だから言ったんだよ。あんなモテ男と付き合ったら大変だって」
今だに智也は司先輩を嫌ってる。
なんでかはわからないけど……
「仕方ないじゃん……。好きだから不安になるんだもん……」
「……」
小さく呟きながら、顔を伏せた。
智也は呆れた顔をしてるかな?
また孝太の時と同じことを繰り返してるって。
でも孝太の時だって、こんなに悩んだことは無かった。
そう……きっとこんなに不安になるのは……
司先輩のあの瞳のせい。
――グシャグシャ
「きゃっ!!」
グリグリ頭を押さえつけるように、頭を撫でてきた智也。
「何すんのよっ!!」
顔をバッと上げて、智也を睨む。
「お前が元気ねぇとか調子狂う……」
「……え」
少し目を伏せた智也に、一瞬胸が跳ねた。
「お前はいつもみたいに、キーィキーィ猿みたいに騒いどけばいいんだよ!!」
「なっ!!」
猿って!!
一瞬でも胸をトキめかせたあたしがバカだった!!
「キーィキーィって何よ!いつもうるさいのは智也でしょ!?」
「はあ!?お前ほどじゃねぇよ!!」
こんな言い合いも日常茶飯事で、クラスのみんなも「またか」なんて目で見ている。