――『好きだ……』



耳元で囁かれた、優しく胸を締めつけられるような声。



「えっ……」




混乱している頭を落ち着けようと、無意識に司先輩の体を押す。




でもそれを司先輩は意図も容易く阻止した。




……好き?




「せ、先輩……?」



「わかってんだよ……。まだ元カレを想ってることくらい」



「……えっ」



「昨日のキスだって、本当は謝らないといけないのかもしれない……。でも、悪い。俺は昨日のキスを無しになんて出来ない」



苦しそうなその声が、さらにあたしの胸を締めつけた。



あぁ―……そうか……



あたし……いつのまにかこんなにも先輩のこと……



「司先輩……」



ゆっくりと司先輩を離す。



悲しそうな瞳に、あたしが写し出されていて、そんな先輩の制服の裾をそっと握った。




「……好きです」



「……え」



「司先輩のこと……こんなにも好きになっちゃったんです」



「っ……」