だからこそ、さっき、何故あんなことをしてしまったのか、はっきりとわからない。



キスが初めてだったわけじゃない。



キスも、それ以上のことも簡単にこなしてきた。



ただ、一度として自分からしたいなんて思ったことはなかった。




ただ、相手が求めてくるから、それに応じて抱いた。




欲望は満たされても、心が満たされることなんて……なかった。




ましてや、自分から求めてしまうことも……



なのに、そのすべてをあの一瞬で崩していた。



気づいたら名前を呼んで、唇を重ねていた。



ほんの触れるようなキスなのに……今までで一番癒されたキスだった。



キスをしたら、欲望の赴くままに抱く。



それが俺だった。



なのに……




唇を離して鈴加を見たら、身体より心を求めていた。



少し潤んだ瞳に、ほんのり熱を持って赤くなった頬……




その全てが愛しくて、ただ唇を重ねた。