「んっ……」



鈴加から漏れた小さな声を合図のように、唇をゆっくりと離した。



「鈴加……」



「えっ……つか……んっ」



離した唇をまたすぐに重ねた。



次はさっきみたいな触れるようなキスなんかじゃなくて、啄むようにキス。




角度を何度も変え、キスを繰り返す。




「んっ……はっ……」




時々漏れる鈴加の声に、理性が崩れそうになる。



そんな自分をしっかりと止めて、ゆっくりと唇を離した。



唇を離しても、今だに絡み合っている瞳。




「今日はそろそろ帰ろっか……」




息を荒らしたままの鈴加にすぐにそう言った。



「……えっ」



「送っていくから」



「あっ……はい」



そのまま何も話さず、学校を出て鈴加を家に送っていった。



「じゃあ……また明日な」



それだけ言って、来た道を戻ろうとした瞬間。



「あのっ……」



ギュッと握られている、制服の裾。




「ん?」



出来るだけ優しく聞き返した。



「あっ……いえ……。やっぱり何でもありません」




静かに手を離し、うつ向いた鈴加。



「そっか。じゃあ、な」



「はい……」



そのまま一度も振り返らず、通ってきた道を戻った。