今年、付き合ってから初めてバレンタインを無視した。

思い出を増やしたくなかった。



「くれないの?」



と、犬っころみたいな目で見つめてくる星司を、初めて憎いと思ってしまった。

わかってやってるところが癪だっての…。



「ないよ。忘れてたっ。」



これが、私の精一杯だった。
星司は、それ以上何も言わなかった。