「結城さんと暗室で二人で話した時に、“結城さんがユウなのか?”って思った。
そして、僕の家に来る前……泣いてる結城さんの口から犬太郎の名前が出て、結城さんがユウなんだと確信した」
……泣いている、私。
青山にキスされて、そして、犬太郎からのメールを受信したあと……。
“犬太郎が……彼が私のことを待つって言ったの。”
あの時、私は確かにそう言った。
私がそう言ったから、村雨くんは全てを知った……。
「……ちょっと待って。 え、奈央ちゃん泣いたの?
て言うか、啓介の家に行った? 何それ、そんな話聞いてないよ」
「……あとで話すよ、今はややこしくなるから黙ってて」
村雨くんの体から力が抜けて、そのまま崩れるようにイスに座った。
「“会いたい”って言ったのを後悔した。
結城さんがユウだと知っていたら、屋上前で待つなんて言わなかった」
犬太郎の言葉が、頭の中を巡る。
“真面目な話なんだけど、ユウのことすげー好き。
だからネットだけの関係で終わらせたくない。”



