「……ごめんね、奈央ちゃん」
ゆっくりと離れた犬飼くんは、そのまま私を見つめ続ける。
……私、犬飼くんとキスしちゃった。
キスされるってわかってたのに、私はそれを、そのまま受け入れた……。
「想い」がまた、優柔不断に揺れ動く。
目の前に居る犬飼くんを見つめながら、頭に浮かぶのは青山の笑顔。
そして、犬太郎からのメールの内容……。
色々なものが頭に浮かんでは消えていく。
「……奈央ちゃんに、聞きたいことがある」
その瞳はとても真剣だけど、声は凄く弱々しくて、苦しそう。
「奈央ちゃんは、誰が好き? 俺? 青山? それとも……」
風が、私たちの間を吹き抜ける。
「……犬太郎が好き?」
犬太郎
どうして犬飼くんがその名前を……私、犬飼くんには何も話していないはずなのに……。
ドキン ドキン ドキン....
鼓動が急激に速まって、上手く息が出来ない。
頭の中で、色々なことがぐるぐると回ってる。
そして……。
「犬飼くんが、犬太郎なの……?」
たどり着いた答えが、それだった。



