【 1分だけでいい。 お願い、用が済んだらすぐ帰るから。 】
……私が拒んでも、犬飼くんは引きそうにない。
【 わかった。1分だけなら、話せるよ。 】
家の住所をメールに書き、送信ボタンを押す。
【 ありがとう、結構近いんだね。5分で行く。 】
そのメールを確認したあと、パジャマの上にカーディガンを羽織り、部屋を出る。
家の中は予想以上にシーンとしてて、不気味な感じ……。
私の家族だけじゃなくて、日本中のみんなが寝てしまってるんじゃないかってくらい静かだ。
階段を下りて、玄関へ。
ガチャ……と僅かな音を立てて、そのドアを開く。
普段は賑やかな街も、今はとても静かで、空気も澄んでいる。
夜の空気って、少し冷たいけど……でも、心が落ち着いて、なんだか気持ちいい。
「結城ちゃんっ」
と、そこへ息を切らした犬飼くんがやって来た。
全然知らなかったけど、私の家と犬飼くんの家は、本当に近いみたい。
「こんな時間にごめんね」
「あっ……こっち来てっ」
車のライトが遠くに見えて、「見つかったらヤバい!!」って思った瞬間、私は犬飼くんの手を掴んで、門の内側へと引き入れていた。
うわわ……私、自分から犬飼くんの手を握っちゃった!!
顔が一気に熱くなる。
「だ、誰かに見られると、大変だからっ……」
「うん、わかってる。 でも、どうしても会いたかったんだ」



